この記事では、ドラッカーの名著①「経営者の条件」を解説しています。
今回は第3章の「どのような貢献が出来るか」の解説をしていきます。
過去回はこちら。
目次
この章のポイント
第3章 「どのような貢献ができるか」では、貢献についての解説をしています。
本文最初に全てが詰まっています。
成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。
手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。
組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。
そして責任を中心に据える。
そして、貢献に焦点を合わせることで、次のような事がうまく回りだします。
- 仕事の内容やレベル
- 影響力
- コミュニケーション
- 自己啓発
- 会議、報告
では、貢献に焦点を合わせるというのはどういう事でしょうか?
簡単に言ってしまうと、自分の仕事ではなく、自分の仕事によって相手がどうなるかをよく考える事です。
貢献に焦点を合わせるということは、「お客さん(相手)の役に立つかどうかを第一に考える」と言っても差し支えないでしょう。
自分の仕事をどれだけ頑張ったかではなく、どれだけ役に立つのかで考える事が、貢献に焦点を合わせることです。
このポイントを踏まえて概略を見ていきましょう。
「第3章 どのような貢献ができるか」の概略
第3章では次の流れで話が進みます。
第3章の流れ
- ①:貢献に焦点を合わせる事の重要性
- ②:専門家が成果をあげるには
- ③:人間関係と貢献について
- ④:会議と貢献について
①:貢献に焦点を合わせる事の重要性とその領域
仕事は常に、「どのような貢献ができるか」を考えましょう。
そもそも仕事とは何なのか?を考えるとすぐに分かると思います。
仕事とは、誰かの役に立つ事の対価としてお金をもらいます。
ですので、誰の役にも立っていない事をしてもお金はもらえないわけです。
サラリーマンで当たり前に給料が入っていると、この大原則を忘れがちです。
しかし、この大原則は絶対に無視する事は出来ません。
例えば、コンビニで飲み物を買おうとしたら、
「これ作るの失敗して飲めないんですけど、頑張ったので買ってください。」
こんなこと言われて買う人はいませんよね?
それと同じです。
「貢献に焦点を合わせる」という事は、このように、「どうやって役に立つか?」を考える事です。
貢献すべき3つの領域
そして、貢献すべき3つの領域があります。
この3つの領域で成果が上がらないと、組織はやがて回らなくなります。
貢献すべき3つの領域
- 領域①:直接の成果
- 領域②:価値への取り組み
- 領域③:人材の育成
それぞれ解説します。
領域①:直接の成果
売上、利益などの経営上の業績です。
これが無いと組織が回らないのは誰でもわかりますね。
領域②:価値への取り組み
技術面でリーダーシップを取る事や、最も安く最も品質の良いものを生み出す事、などがあります。
領域③:人材の育成
組織は個としての生身の人間の限界を乗り越える手段である。
したがって自らを存続させえない組織は失敗である。
このように、人材を育成していかないと、組織は必ず崩壊します。
そうならない為に、そして、さらなる成果をあげる為に人材の育成が必要です。
人は課された要求水準に適応する。貢献に照準を合わせる者は共に働くすべての人の視点と水準を高める。
ここでは、例として看護師の話が出て来ます。
地位的には偉くもなんともない看護師が「それは患者さんにとって一番良い事でしょうか?」という質問を必ず投げかけます。
そうすると、地位が上の者や、とても優秀な医師などが、この質問に答える為に最善を尽くそうとするのです。
このように、「患者さんの役に立つ」という貢献に焦点を合わせる事が、立場が上の者や自分よりも優秀な人をさらに育てていくのです。
また、貢献に焦点を合わせずに、「これまで成功してきた自分のやり方」に固執する事の危険性についても説いています。
よくある失敗として、新しいポストに移った人が、これまでと同じやり方で仕事をして失敗してしまうものです。
これまでと違う環境になったのなら、その環境でどんな貢献をすべきかをしっかりと考えていかなくてはなりません。
それを無視して自分のやり方を通すと、トンチンカンな事をしてしまうという事です。
②:専門家が成果をあげるには
現代では肉体労働者でも知識労働者でも、頭を使って仕事をしている人は少なからず何らかの専門家(特定の部分に詳しい)です。
成果をあげるにはその専門分野を活かすのが得策です。
そして、専門家(あなた)が成果をあげる為に必要なのは、何を知り、何を理解し、誰に利用してもらうのかを考えることです。
専門家はどうしても専門分野を理解してもらう努力を怠りがちですが、それでは他の人に利用してもらえません。
利用してもらえないのであれば、それは無価値とも言えます。
そうならない為にも、何を知り、何を理解し、誰に利用してもらうのかをしっかりと考えましょう。
自分の仕事ではなく、成果につながるのは何か?そして、どうすれば成果につながるのか?を考えましょう。
③:人間関係と貢献について
対人関係の能力を持つことによってよい人間関係が持てるわけではない。
生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である。
仕事上の関係において成果がなければ、温かな会話や感情も無意味である。
仕事中に腹が立ったことと言えば、たいていが自分勝手な事を言う人に対してではないでしょうか?
逆に、一緒に仕事をしたいのは、前向きに相手のこと考えて仕事している人が良いと思いませんか?
この様に、貢献に焦点を合わせることで、よい人間関係を持つ事が出来ます。
また、貢献に焦点を合わせることによって、次の4つの基本的な能力を身につける事が出来ます。
貢献により身につく4つの能力
- 能力①:コミュニケーション
- 能力②:チームワーク
- 能力③:自己開発
- 能力④:人材育成
能力①:コミュニケーション
上司から部下へなどへの下方のコミュニケーションでは、コミュニケーションの効果はありません。
しかし、貢献に焦点を合わせると、次のような質問が出て来ます。
上司「あなたに対して、どのような貢献を期待すべきか?」
上司「あなたの知識や能力を最もよく活用できる道は何か?」
こういった疑問が出て、部下は自分の貢献すべき内容を伝えることで、実のあるコミュニケーションが出来るようになります。
能力②:チームワーク
自らが生み出すものが成果に結びつく為には、「自分の仕事を誰に利用してもらうのか?」を考える必要があります。
それは、命令系統の上でも下でもない人たちの場合もあります。
そうなると、自分の成果を利用してもらう人とのコミュニケーションを取る必要が出てきて、チームワークが可能となります。
能力③:自己開発
自己開発の大部分は貢献に焦点を合わせるかどうかにかかっています。
自らの貢献を考えることで、今の自分に足りない物を考えられるようになります。
そして、それを見につけることが自己開発となります。
能力④:人材育成
貢献に焦点を合わせると、自分と同様に他者の自己開発も促す(=人材育成)ようになります。
成長に関して良い言葉がありましたので、紹介します。
自らが自らに課す要求に応じて成長する。
自らが成果や業績とみなすものに従って成長する。自らに少ししか求めなければ成長しない。
多くを求めるならば何も達成しない者と同じ努力で巨人に成長する。
④:会議と貢献について
最後が会議についてです。
会議でも同様に貢献に焦点を合わせることで、会議から何を得て、何を目的とすべきかを考えるようになります。
つまり、それぞれの会議を自分たちの貢献に役立つものにしなければなりません。
以上の流れで貢献について解説しているのが、「第3章 どのような貢献ができるか」です。
自分が「どんな貢献をするのか」に意識を向けることで、様々な事が見えて来ます。
「何の為にこの仕事をするのか?」といった、そもそもの話から考えていく事になるので、貢献すべきことが見えた後の仕事は強くなります。
理由やバックグラウンドがはっきりする事で「これほど力強く仕事が出来るのか!」と痛感すると思います。
貢献に焦点を合わせて成果をあげていきましょう!
第4章はこちら。
それでは、今日も一日ご安全に!