この記事では、ドラッカーの名著①「経営者の条件」を解説しています。
今回は第5章の「最も重要なことに集中せよ」の解説をしていきます。
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目次
この章のポイント
第5章 「最も重要なことに集中せよ」では、次のように集中することについて論じられています。
成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。
成果をあげる人は最も重要な事から始め、しかも一度に一つの事しかしない。集中とは、「真に意味ある事は何か」「最も重要な事は何か」という観点から時間と仕事について自ら意思決定をする勇気の事である。
この集中こそ、時間や仕事の従者となることなくそれらの主人となる為の唯一の方法である。
成果のあがらない人がやってしまいがちな複数の事に手を出す事や、持つべき時間の感覚、仕事の取捨選択などに触れています。
そして、この章で特に重要だと感じるのは、「勇気」です。
ちょっと考えれば、真に重要な事は「問題」ではなく「機会」だとわかります。
しかし、「問題」よりも「機会」に注力するのはかなり勇気が必要です。
問題に優先的に手を付けなかったことで後々大問題になるのも恐ろしいです。
声の大きい人に言われたら優先順位が低くてもやらないといけない気がしてしまいます。
こういった事に打ち勝って、本当に重要なことに集中して取り組むには「勇気」が必要なのです。
こういう本で「勇気」の問題になるというのもちょっと意外かもしれません。
しかし、こういうテクニックだけにならず、現実的に必要な精神的な部分までカバーしているのがドラッカー先生のすごい所ですね。
どこまで行っても実践的です。
「第5章 最も重要なことに集中せよ」の概略
第5章では次の流れで話が進みます。
第5章の流れ
- ①:一つの事に集中することの重要性
- ②:重要でない過去のことをやめる
- ③:優先順位、劣後順位について
①:一つの事に集中することの重要性
まずは、一つのことに集中することの重要性を説いています。
先ほども引用しましたが、次の通りです。
成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。
集中が必要なのは様々な理由がありますが、主なもので次の3つがあります。
集中が必要な3つの理由
- 理由①:全ての仕事を行う時間などない
- 理由②:強みに集中しないと成果はあがらない
- 理由③:脳ミソの限界
理由①:全ての仕事を行う時間などない
まずは、時間よりも圧倒的に仕事が多い事です。
どんなに効率よくこなしても全ての仕事を行うことなどできません。
ですので、重要な仕事に集中し、重要でない仕事をやめる必要があります。
理由②:強みに集中しないと成果はあがらない
自分が得意な分野で、そこに集中することによって成果をあげる事ができるものです。
片手間で色々やって成果をあげていると思うかもしれませんが、おそらくそれは大した成果ではありません。
「強み」と「まとまった時間」がある事で初めて成果はあげられます。
理由③:脳ミソの限界
良い仕事をするには2つのことでも難しいという、脳ミソの単純な現実があります。
2つ以上のことをするのは、いうなれば曲芸です。
集中力を余計に使ってしまうだけです。
時間効率も悪くなるうえに、内容も粗末なものになってしまいます。
もちろん、人によっては2つ以上のことを進めることが得意な人もいるかもしれません。
しかし、その可能性はほぼない事、2つ以上を同時に進めることでより成果が上がる事にはならない事を考えると、それをする必要もないでしょう。
要するに「一度に一つのことを行うことが、成果が上がり早く仕事が出来る唯一の方法」という事です。
②:重要でない過去のことをやめる
続いては、生産的でなくなった過去のものを捨てることについて解説しています。
時間の流れと共に、その当時は最適だった仕事も変化していきます。
そうなると、その仕事は今でも最適かどうかは分からなくなります。
そういった最適でない仕事をしっかりとやめることが重要です。
具体的には、次のように検討します。
自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、いまこれに手を付けるか」を問うことである。
答えが無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。
この様に、今では生産的でなくなった過去のものに人の強みという第一級の資源を使ってはならない。
この資源を使うのは、「過去の問題」ではなく、「明日の機会」に使うべきです。
今まで投じた資源を「サンクコスト」と言いますが、サンクコストが多いほどやめることが困難になります。
「今までこれだけやってきたんだから。。。」と考えてしまうわけです。
しかし、未来の資源まで無駄遣いすることになってしまうので、勇気をもって決断すべきです。
そして、「明日の機会」に優秀な人を投入する事を説いています。
新しいものにやさしいものはない。
新しいものは必ず問題にぶつかる。
そして新しいものを難局から救う唯一の手立てが、仕事の出来る人を用意しておく事である。
③:優先順位、劣後順位について
最後は、仕事の優先順位と劣後順位についてです。
仕事の重要度の決定が必要です。
特に注意しなければならないのが、優先度を決める際に状況や周囲からの圧力によって優先順位を入れ替えてしまう事です。
実際の所「明日の機会」は、今すぐにやらなくても問題にはなりません。
そこで、先延ばしにして今は問題に対処することになりがちです。
さらに、自分自身も圧力をかけてしまいます。
「この問題に対処しないで後々もっと大きな問題の引き金になってしまったらどうしよう。」
このように思う事に手を出さないのは勇気が要ります。
また、この「やめる」という選択は当然楽しいものではありません。
たとえやめるべき事でも、その仕事は誰かにとっては優先順位一位なのです。
こういった様々な圧力に屈せずに、取り組むべきでない事をやめる、という決断をしていく必要があります。
だから、ドラッカー先生は、「集中とは、自ら意思決定をする勇気の事である。」と言っているわけですね。
そして、優先順位の決定の原則についても解説しています。
優先順位の決定の原則
- 原則①:過去ではなく未来を選ぶ
- 原則②:問題ではなく機会に焦点を合わせる
- 原則③:横並びではなく独自性を持つ
- 原則④:無難で容易なものではなく、変革をもたらすものを選ぶ
これらは全て、分析ではなく勇気に関わるものです。
過去の習慣に流される方が楽ですし、問題に向き合う方が楽です。
横並びの仕事をした方が楽ですし、無難で容易な物の方が楽です。
こういった、楽な道に流されずに、成果をあげる為に困難な道を選ぶことを「(楽な道を外し、成果のあがる道に)集中する」と説いています。
どうしても楽な方向に流れてしまいがちなので、私自身も耳が痛いですが、これを念頭に入れて仕事の取捨選択をしています。
もちろん、「何で対応しないの?」といった事を雰囲気で感じることもあります。
後ろ指も刺されているでしょう。
しかし、成果につながる事を品限り自分の存在価値はないと考えているので、それも仕事だと割り切っています。
以上の流れで強みについて解説しているのが、「第5章 最も重要なことに集中せよ」です。
沢山のことをしなければならないからこそ、一つのことに集中する。
急がば回れみたいですが、真実ですね。
重要な事を1つ選び、全力でそれを行い、成果をあげていきましょう!
それでは、今日も一日ご安全に!