この記事では、ドラッカーの名著①「経営者の条件」を解説しています。
今回は第6章の「意思決定とは何か」の解説をしていきます。
初回はこちら。
前回はこちら。
目次
この章のポイント
第6章 「意思決定とは何か」では、次のように意思決定について論じられています。
成果をあげるエグゼクティブを論ずるにあたって、意思決定は特別の扱いを受けるに値する。
組織や組織の業績に対して重大な影響を及ぼすようなことを期待されている者こそエグゼクティブである。
エグゼクティブは成果をあげる為に意思決定を行う。
そして、この章では「意思決定とは何か」を解説しています。
この章に出てくる「意思決定」の性質を表すものをまとめたのが次のものです。
意思決定の性質
- 意思決定の数を多くしてはならない
- 重要な意思決定に集中しなければならない
- 問題の根本をよく理解して決定しなければならない
- 決定の速さを重視してはならない
- 何についての決定であり何を満足させるかを知る必要がある
- 形にこだわらず、インパクトを求める
- 賢くではなく、健全であろうとすること
これらをまとめると意思決定のポイントは次の通りであり、これがこの章のポイントになります。
意思決定のポイント
「最も重要な事を的確に、しっかりと理解して確実にポイントを捉えた意思決定を行うこと」
これは、当たり前と言ってしまえば当たり前ですが、結局重要なのは当たり前のことをしっかりと出来るかどうかです。
何事もそうですが、お手軽なテクニックではなく基本的なことをしっかりとやる事です。
非常に単純ですが、これがこの章のポイントになります。
そして、このポイントを様々な観点から解説しているのが第6章の内容です。
「第6章 意思決定とは何か」の概略
第6章では、意思決定の概要を説明した後に、成果をあげる意思決定を行う5つのステップの解説をしています。
第6章の流れ
- ①:意思決定とは何か
- ②:成果をあげる意思決定の5つのステップ
- ②-1:問題の種類を知る
- ②-2:必要条件を明確にする
- ②-3:何が正しいかを知る
- ②-4:行動に変える
- ②-5:フィードバックを行う
①:意思決定とは何か
まずは、この章全体で説明する「意思決定」についての概略です。
「意思決定のポイント」については先ほど解説していますので、サラッと流します。
成果をあげるエグゼクティブを論ずるにあたって、意思決定は特別の扱いを受けるに値する。
組織や組織の業績に対して重大な影響を及ぼすようなことを期待されている者こそエグゼクティブである。
エグゼクティブは成果をあげる為に意思決定を行う。
意思決定のポイント
「最も重要な事を的確に、しっかりと理解して確実にポイントを捉えた意思決定を行うこと」
②:成果をあげる意思決定の5つのステップ
成果をあげる意思決定を行うには必要とされる5つのステップがあります。
意思決定の5つのステップ
- ステップ1:問題の種類を知る
- ステップ2:必要条件を明確にする
- ステップ3:何が正しいかを知る
- ステップ4:行動に変える
- ステップ5:フィードバックを行う
どれも非常に重要なので、一つずつ解説していきます。
ステップ1:「問題」の種類を知る
まずは自分が行うべき意思決定の「問題」がどんなものかを知る必要があります。
「問題」は次の4つの種類に分類する事が出来ます。
- 1:基本的な問題の兆候に過ぎない問題
- 2:当事者にとっては例外的だが実際には基本的、一般的な問題
- 3:真に例外的で特殊な問題
- 4:何か新しい種類の基本的、一般的な問題の最初の表れとしての問題
本章ではそれぞれの内容について解説していますが、問題のほとんどが基本的、一般的な問題です。
その問題の原因が何かをしっかりと理解していかないと、いつまで経っても解決しない事が多いです。
本文中では、蒸気配管の漏れの修理で例えています。
蒸気配管の修理を行う際にも様々な意思決定をする必要があります。
誰が、いつ、修理用の材料、工具など色々あります。
そして、これらをいかにうまく意思決定を行っても、根本の原因である「圧力が高すぎる」という問題に着手しなければ、いつまで経っても修理し続けなければなりません。
この様に、原因をしっかりと理解して対処しないと「問題」は解決しません。
ステップ2:必要条件を明確にする
2つ目は決定の目的、達成すべき目標、満足すべき必要条件は何か?を明らかにする事です。
必要条件を簡潔かつ明確にするほど、決定による成果はあがり、目的を達成する可能性が高まります。
これも当たり前と言えば当たり前のことです。
「そもそもなぜこれをするのか?」、「これをする事で目的を達成できるのか?」を考えるわけです。
しかし、現実にはそれを頑張って達成したとしても、目的が達成できないような状況になってしまっていることがたくさんあります。
皆それをする事に集中して、目的が達成されるかどうかを考えるのを避けているように感じます。
何も考えずに目の前の課題をこなす方が気楽なのです。
しかし、それでは当然成果はあがりませんよね。
そこを明確にさせましょうということです。
ステップ3:何が正しいかを知る
決定においては何が正しいかを考えなければならない。
誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならない。
誰が正しいとか、受け入れられやすいとかで物事を判断すると、どうしても「何のために」が薄くなります。
そして、目的をはき違えて成果が上がらなくなってしまうのです。
また、成果をあげていくには多くの場合、現実問題として「妥協」が必要になります。
しかし、「妥協」にも正しい妥協と間違った妥協があり、次のように例えています。
- 「半切れのパンでも、ないよりはまし」
- 「半分の赤ん坊は、いないより悪い」
パンは半分でも腹の足しになりますが、半分の赤ん坊は何の意味もありません。
むしろ害があります。
このように何が正しいかをしっかりと理解しておかないと、間違った妥協をして余計に悪い方向に進んでしまいます。
ステップ4:行動に変える
決定は必ず行動に変えなければなりません。
事実、決定の実行が具体的な手順としてだれか特定の人の仕事と責任になるまでは、いかなる決定も行われていないに等しい。
それまでは意図があるだけである。
要するに、決定だけしても行動につながらなければ何の意味もないのです。
私も仕事でよくこの状況に出会います。
上司が決断をするのですが、決断をしただけで誰が実行するのか?いつ実行するのか?が全くないので、誰も実行しません。
そして、時間が経って「何で決定したのに進んでないんだ!」と怒っているのです。
こうならない為に「決定」は最初の段階から「行動」を組み込んでおく必要があります。
現実的に次のことを組み込んでいかないと行動に変わりません。
- 誰がこの意思決定を知らなければならないか
- いかなる行動が必要か
- 誰が行動をとるか
- その行動はどんなものか
これらを決定を行う段階でしっかりと決めておきましょう。
ステップ5:フィードバックを行う
最後もとても現実的な話です。
どんなに最善を尽くしたとしても人間のやる事なので最高の決定を下せるわけではありません。
当然間違っている可能性があります。
さらに、当初は正しくても時間の経過とともに陳腐化してしまいます。
そこで、必ずフィードバックを行う必要があるのです。
そして、フィードバックは必ず自分で行う必要があります。
例え話で軍の話が出て来ます。
命令を出した将校が自ら出かけ、確かめなければならない事を知っている。
命令を受けた当の部下からの報告を当てにしない。
信用しないということではない。
コミュニケーションが当てにならないことを知っているだけである。
数字やデータでのフィードバックももちろん大事ですが、現場で現実に直接触れることを中心にしてフィードバックを行わないと、必ず痛い目に遭うと言っています。
以上の流れで強みについて解説しているのが、「第6章 意思決定とは何か」です。
意思決定はその決定次第で、自分だけでなく組織の成果を大きく左右させてしまいます。
しかし、この章の内容をしっかりと理解して実行する事で、少なくともトンチンカンな決定は避けられると思います。
ぜひ、意識して意思決定を行ってみましょう。
それでは、今日も一日ご安全に!