を改めて考えてみると意識が変わるよ!
こんな疑問に答えます。
本記事の内容
- 安全意識の向上を図るには?
- 効果のでない、建前的な「怪我をしてはいけないつの理由」
- 伝わりやすい、怪我をしてはいけないたった1つの理由
安全関係についても、各種対策を進めていき、毎年災害が発生していた職場を無災害7年以上(現在進行形)に導いたこともあります。
安全意識の向上に悩む人の悩みとして、「いったいどうしたら向上するの?」という点があると思います。
私の職場は年に複数回の災害が発生する、非常に問題のある職場でした。
災害が発生するたびに対策を取るのですが、それとは別の災害が発生し、繰り返される怪我に悩まされていました。
そこで、もう怪我を発生させないために様々な取り組みを行いました。
この取り組みを行う中で安全への意識というものがどんどん変わっていくのが目に見えてわかりました。
意識が変わると行動も変わり、災害は起こらなくなりました。
そこで今回は意識を変える良いきっかけになった内容を解説したいと思います。
目次
「安全意識の向上」は「不安全な行動」撲滅の対策
まず、災害が発生してしまうのは次の2つのどちらか、もしくは両方があるからです。
- 不安全な状態(環境)
- 不安全な行動(人間)
そして、今考えている「安全意識の向上」は「不安全な行動」に対して効果があります。
要するに、「たとえ危険な場所があったとしても、それを避けるように行動すれば怪我をしない」ということです。
もう一方の不安全な状態は「たとえ危険な行動をしたとしても、危険な場所が無ければ怪我をしない」ということです。
この辺の全体像については、詳しくはこちらで解説しています。
安全意識を向上させるには?
安全意識を向上するのに、効果があるのがこれです。
「なぜ怪我しちゃいけないの?」を考える
もしかすると、あまりにも当たり前すぎて、しっかりと考えたことがないかもしれません。
あなたはこの質問にしっかりと答えられるでしょうか?
色々と頭の中にキーワードは出てくるとは思いますが、イマイチ整理がつかないのでないでしょうか?
私も以前この質問に答える為に色々と考えました。
この質問が腹に落ちると、素直に「怪我しちゃいけないな」と思えるようになり、安全意識が向上します。
しかし、これは「ただ考えれば良い」というものではありません。
次のような建前的な理由になってしまうと腹に落ちず、効果はありません。
効果ナシ:建前的な「怪我をしてはいけない3つの理由」
解説します。
怪我をしてはいけない3つの理由
- 理由①:人道的見地
- 理由②:社会的責任の見地
- 理由③:企業経営の見地
少々眠たくなるような内容かもしれませんので、さらっと読んでください。
理由①:人道的見地
「誰一人、生命や健康が損なわれることがあってはならないという人間尊重の思想に基づき、全ての人が安心して働ける環境を実現する」
至極もっともな内容です。
誰だって安心して働ける状態を求める権利がありますし、当たり前にその権利を受けられなくてはなりません。
理由②:社会的責任の見地
「社会全般に影響のある存在として、法秩序を守る事、道徳的・倫理的規範に従う。」
公の存在である会社は社会の信頼を得るために、法や規範に従うことが重要である。
怪我をするのが当たり前の職場は、これに違反している。
だから、一人一人の安全衛生への取り組みが社会的責任を果たす事に直結している。
理由③:企業経営の見地
「当事者のみならず、近隣住民への迷惑ともなり、操業停止になる可能性もある。」
例えば、毎年爆発事故を起こす工場があったとして、あなたがこの工場の近隣住民だったら不安になると思います。
また、毎月怪我が発生している職場で働くのも嫌だと思います。
これが防げないのであれば、操業停止になる事も仕方ないですよね。
このような場合、操業停止になれば会社は経営を続ける事が出来ません。
こういった意味からも、怪我をする事で、企業経営が危うくなります。
以上の3つの理由から、怪我をしてはいけないことになります。
・・・しかし、この理由3つを説明したところで、安全意識が向上するかと言われると正直微妙です。
言いたいことは分かるけど、現場の人からしたら距離感が遠くてイマイチ伝わらないかなと。
というか、これは社長が自分の会社を守るために叫ぶ内容であって、そこに働く人の為に言っているわけではないです。
だから響かないのです。
そこで、もっとダイレクトに響く理由をもう一度考え直しました。
効果アリ:たった1つの理由は「誰も喜ばないから」
たった1つのシンプルな理由になりました。
それがこれです。
「誰も喜ばないから」
解説します。
怪我、災害は誰も喜びません。
あなた、職場の人、家族、友人、あなたが怪我をして喜ぶ人はいるでしょうか?
誰もいませんよね。
喜ばない理由が3つありますので、それを解説します。
怪我を誰も喜ばない理由
- 理由①:本人も痛いし、周囲もつらい
- 理由②:怪我の対応に追われる
- 理由③:金銭的損失がある
理由①:本人も痛いし、周囲もつらい
怪我の程度にもよりますが、基本的にとても痛いです。ひどい場合だと、障害が残ったり、死亡してしまう事もあります。
そんな風になって嬉しいわけがないですね。
職場の人や家族、友人も痛がっている人や、つらそうにしている人を見るのは嫌なものです。
また、怪我をすると本人も周囲の関係者も仕事の評価が下がります。
もちろん、痛い思いやつらそうな人を見る事よりはマシですが(人によるかな…。)、これも嬉しくないことですね。
私個人的には「痛がる人を見るのがつらい」というこの理由があるだけで、絶対に誰も怪我しないでほしいです。
見るのもするのも嫌です。
理由②:怪我の対応に追われる
怪我が発生すると、当然対応に追われます。
- 病院に連れていく
- 発生原因を追究・対策する
- 内外への報告
このような業務が急に発生します。予定して怪我する事はないので、当然ですが…。
しかも、緊急を要する事なので、他の仕事をそっちのけで、すぐに取り掛からなくてはなりません。
怪我の対策も基本的には作業がやりにくい方向になってしまいますので嫌がられます。
特に怪我がひどくなると警察が現場検証に来たりもしますので、そういう外部との対応は精神的にもかなり負担が大きいです。
理由③:金銭的損失がある
試算してみると、想像以上に損失金額が発生していることが分かります。
費用の内訳は大きく分けて3つあります。
- 直接コスト
- 間接コスト
- 個人の評価が下がり、賞与や給料が下がる
直接コスト
直接コストは、被災者本人に直接かかる費用の事です。
治療費、入院費、見舞金や、休業補償費、傷害補償費、遺族補償費などです。
基本的に怪我がひどくなるほど費用は大きくなり、死亡するとさらに跳ね上がります。
間接コスト
間接コストは、被災者本人以外にかかる費用です。
次のような様々なものがあります。
- 材料の損失費
- 設備の復旧費
- 作業停止期間分の損失費
- 調査、対策、報告、およびその資料作成の人件費
- 関係省庁との折衝(内容によっては操業停止にもなる)
- 労災保険料の値上がり
これらは、軽めの怪我でもそれなりの費用が掛かります。
特に、怪我をする事によって多くの人が対応に走り回ることになるので、人件費が想像以上にかかります。
軽めの怪我でも、一説によると300万円もの間接コストがかかるという話もあります。
個人の評価が下がり、賞与や給料が下がる
これは会社の損失ではなく、個人の給料の問題です。
もう想像の通りなので特に解説はしませんが、こういう事もあります。
以上のような金銭的損失が発生します。
これら3つの理由で怪我をしても誰も喜ばないのです。
理由をもう一度載せます。
怪我を誰も喜ばない理由
- 理由①:本人も痛いし、周囲もつらい
- 理由②:怪我の対応に追われる
- 理由③:金銭的損失がある
正直なところ、理由①だけで十分です。②と③はオマケと言っても良いかもしれません。
いずれにせよこれらの理由から、腹の底から怪我するのが嫌だと思えるようになるきっかけになります。
もちろん、これを伝えれば無災害が達成されるわけではありません。
しかし、安全意識の向上に関しては「なぜ怪我をしちゃいけないの?」を考えることで、
改めて「怪我をしてはいけないな」と思えるようになるのではないでしょうか?
何度も言いますが、怪我をしても誰も喜びません。
周囲の人も、あなたも皆つらい思いをします。
だから怪我をしないようにしましょう!
労災隠しはダメ、絶対!
怪我をした時といえば「労災隠し」はご存知でしょうか?
労災隠しとは「怪我が起こったことを報告せずに、もみ消してしまうこと」です。
なぜこれが起こるのかというと、労災が発生することで次のようなデメリットがあるからです。
- 労働基準監督署からの業務停止処分や業務改善命令などの行政上の処分がある
- 労災保険料が値上がりする
- 関係者の評価が下がる
こういったデメリットがあるから、怪我をなかったことにしてしまいます。
しかし、忘れてはいけないのが、「労災隠しは犯罪」ということです。
厚生労働省のホームページにもしっかりと載っています。
もし、「なかったこと」にされそうになったら、しっかりと立ち上がってください。
最後に
今回は「なぜ怪我しちゃいけないの?」というとても基本的な問いを考えることで、安全意識を向上させるものでした。
もちろん、これだけでは災害はなくならないでしょう。
また、意識が変わっても現場の危険な場所は1つも減っていません。
現場の対策に興味がある場合には、こちらの記事がオススメです。
無災害の達成は、ただがむしゃらに叫んでいても達成できません。
しっかりと「何を行うべきか?」を考えて行動する必要があります。
「何を行うべきか?」に悩んだら、こちらの記事がオススメです。
きっとどうすればいいかわかるようになります。
それでは、今日も一日ご安全に!