イラストの準備の仕方もわかるよ!
こんな疑問に答えます。
本記事の内容
- KYTとは?
- 簡単に分かるKYTの進め方
- KYTイラストの準備方法
- KYT書式のダウンロード
KYTのイラスト作りから行い、実施しています。
KYTのやり方に悩んでいる人のよくある悩みとして、「どうやってKYTを始めたらいいのだろうか?」という点があると思います。
KYTは最初こそやり方がよくわからないかもしれませんが、理解してしまえば手軽に行う事が出来ます。
イラスト準備も大変に思えますが、やってしまえばそんなに大変なものでもないです。
簡単に理解できるように解説していきます。
先にkYTの目的や意義、進め方を解説します。
イラスト準備方法が早く見たい方はこちらからジャンプできます。
目次
KYTとは?その目的は?
まずは、KYTを何のためにやるのか?
について考えていきます。
KYTとは?
そもそもKYTとは、次の頭文字をとっています。
業界によっては、ツールボックスミーティングと呼ばれることもあります。
- K:危険(kiken)
- Y:予知(yochi)
- T:訓練(training)
(なんで訓練だけ英語なのでしょうね???)
KYTの目的は「危険な場所でも安全な行動をとれるようになること」
これは危険を予知する力を付ける事で、労働災害の発生を防ごうという考え方です。
そもそも労働災害というのは、次のどちらか、もしくはどちらもが存在する事によって起こります。
労災の発生原因
- 不安全な状態(環境)
- 不安全な行動(動作)
このうちKYTは基本的に「不安全な行動」への対策となります。
たとえ「不安全な状態」があったとしても、労災につながる行動をしない
といった具合です。
だから、基本的な発想としては危険な場所はなくならないので、いかにそれを避ける行動をとるか?といったイメージです。
「いやいや、危険な場所も減らそうよ!」という場合には、こちらの記事の危険個所を減らす方法が参考になります。
簡単に分かるKYTの4R法の進め方
KYTについては、その目的、やり方、イラストが厚生労働省のホームページに載っています。
外部リンク:厚生労働省ホームページ 第3章KY活動
しかし、73ページもあるので正直読むのは大変です。
KYT自体も模造紙を準備したりと、結構大がかりです。
ですので、手軽にできるように簡単にして解説していきます。
KYTのやり方は「4R(ラウンド)法」と言います。
4R法
- 1R:危険の洗い出しをする(どんな危険が潜んでいるか?)
- 2R:最も危険なポイントを決める(これが危険のポイントだ)
- 3R:その対策を考える(あなたならどうする?)
- 4R:目標設定する(私たちはこうする)
まずはリーダーを決めて集合してイラストや写真を見ます。
どこかの現場を直接見るのでも大丈夫です。
今回は「脚立の上での作業」でやってみます。
(後ほどイラストの準備方法も解説します。)
1R:危険の洗い出し(どんな危険が潜んでいるか?)
まずは、リーダーはメンバーに対して「どんな危険が潜んでいるか?」と問いかけます。
メンバーは危険な箇所を想像して「○○なので、△△になる」のように答えます。
△△の部分は、落ちる、転ぶ、挟まれるなどのように事故の型で言い切ります。
脚立の上で作業をしている。どんな危険が潜んでいるか?
回答例
- 台車が通り、脚立にぶつかって脚立から落ちる
- 脚立から離れた場所まで身を乗り出したので脚立がぐらついてよろけて落ちる
- 地面からあと2段で横着して脚立から飛び降りて足をくじく
このように具体的にどんな事が起こって、どんな風にケガをするのかをはっきりと言い切ります。
いくつかの意見が集まればOKです。
出した意見を否定するのはやめましょう。
2R:最も危険なポイントを決める(これが危険のポイントだ)
出てきた意見に対して、最も重要と思われるポイントを決めていきます。
例:脚立の上で作業をしている
- 台車が通り、脚立にぶつかって脚立から落ちる
- 脚立から離れた場所まで身を乗り出したので脚立がぐらついてよろけて落ちる
- 地面からあと2段で横着して脚立から飛び降りて足をくじく
リーダーはメンバーに意見を聞きます。
リーダー「この中で最も危険と思われるのはどれでしょうか?」
メンバー「足をくじくよりも、落下する方が危険だと思います。」
リーダー「では、台車がぶつかってくるのと、身を乗り出してしまうのはどちらが起こりやすいでしょうか?」
メンバー「身を乗り出してしまう方が起こりやすいと思います。」
リーダー「では、それを危険のポイントにしましょう。」
例:脚立の上で作業をしている
- 台車が通り、脚立にぶつかって脚立から落ちる
- 脚立から離れた場所まで身を乗り出したので脚立がぐらついてよろけて落ちる←危険のポイントに決定
- 地面からあと2段で横着して脚立から飛び降りて足をくじく
3R:その対策を考える(あなたならどうする?)
危険のポイントが決まったら、それをどう回避するかをメンバーに考えてもらいます。
内容は出来るだけ具体的にし、行動や状態を変えるようにします。
また、「○○しないようにする」といった否定的な言葉ではなく、具体的に「○○する」といった意見を出してもらいます。
リーダー「身を乗り出して脚立がぐらついてよろけて落ちないためにはどうしたら良いでしょうか?」
メンバー「脚立をその都度動かすのが良いと思います。」
メンバー「脚立を作業する場所の中心に置いて、身を乗り出さなくても作業できるようにするのが良いと思います。」
メンバー「脚立から落ちないように安全帯をするのが良いのではないでしょうか?」
脚立から離れた場所まで身を乗り出したので脚立がぐらついてよろけて落ちる」の対策
回答例
- 脚立を作業する場所の中心に置いて、身を乗り出さなくても作業できるようにする
- 脚立をその都度動かす
- 脚立から落ちないように安全帯をする
4R:目標設定する(私たちはこうする)
いくつか出た対策の中から、最も重要と思われるものを決めていきます。
そして、決めたものを全員で唱和(しょうわ)します。
「脚立から離れた場所まで身を乗り出したので脚立がぐらついてよろけて落ちる」の対策
回答例
- 脚立を作業する場所の中心に置いて、身を乗り出さなくても作業できるようにする
- 脚立をその都度動かす
- 脚立から落ちないように安全帯をする
リーダー「どれが最も重要でしょうか?」
メンバー「1回で楽しようとすると届かなかった時に怪我をしてしまいそうなので、その都度脚立を動かすのが良いと思います。」
メンバー「私もそれが重要だと思います。」
メンバー「確かにそれが良いと思います。」
リーダー「では、脚立をその都度動かすに決定しましょう。」
決まったら最後に唱和をします。
リーダー「脚立で作業する時は、脚立をその都度動かそう」
メンバー「脚立で作業する時は、脚立をその都度動かそう」
リーダー「ヨイカ!」
メンバー「ヨシ!」
以上のようにして、KYTを行います。
記録の取り方としては、厚生労働省のホームページにはすべてを記録するように書いてあります。
しかし、私の経験では、全ての意見・対策を紙に書いてもあまり意味は感じないので、次の3つを書くくらいでいいと思います。
- テーマ
- 危険のポイント
- 対策
もちろん、取り組みの頻度、報告の必要性などによっても記録をどうするかは変わるので、必要に応じて変えていくのが良いと思います。
KYTのイラストの準備方法
続いてはKYTのイラストの準備方法を解説します。
オススメは「自分で現場の写真を撮って作ること」
がっかりするかもしれませんが、おススメの方法は「自分で現場の写真を撮って作る」です。
結局はコレなんですよ。
イラストは、ネットで探して出てくるものや購入できるものがあります。
しかし、そのほとんどが自分の現場と関連性の低い現場の写真です。
関連性の高いものがあったとしても、出てくるのは台車とか脚立とか誰が見てもわかるものばかりです。
正直なところ、こういったイラストだとわざわざやる価値が無いです。
頭使わないで答え出てしまうし、考えないんですよ。
そもそも何のためにやるかを考えたら、頭使わないKYTなんてやっても意味がないわけです。
台車に山盛り乗っけてフラフラしてる写真を見て、何のトレーニングになるでしょうか?
だから、自分の現場の写真を撮ってどこが危ないかをKYTで考えるのが良いんです。
作るのが面倒に思うかもしれませんが、実はとても簡単です。
次の3つの手順をやるだけです。
KYT資料の作り方手順
- 手順①:現場で誰かが作業している写真を撮る
- 手順②:その写真を「書式」に当てはめる
- 手順③:印刷する
ポイントは、普通の作業の状態を写真に撮ることです。
わざと危ない写真を撮るよりも、普通の状態から探す方が頭を使うからです。
あとは何回も使うならラミネートしておいても良いですね。
KYT書式のダウンロード
私は下のような書式を使っています。
現場の写真を撮って、この書式に貼り付けるだけでKYTの資料が出来上がります。
書式はこちらからダウンロードできますのでご自由にお使いください。
その他のイラスト準備方法
自分で写真を撮る事をオススメしていますが、最初はちょっとしんどく感じてしまうのであれば、とりあえずネットや本で手に入れる方法もあります。
もちろんあまりオススメはしていませんが、時間が無い場合や、「とりあえず」という場合は利用してみましょう。
イラストの準備方法は次の3つがあります。
イラストの準備方法
- ①:「KYT イラスト」でgoogle検索してイラストを集める
- ②:厚生労働省のホームページを活用する
- ③:イラストを準備せず、現場で行う
①:「KYT イラスト」でgoogle検索してイラストを集める
検索して探します。
これで色々出てくるのでただ単に資料を準備するというだけならば、お手軽と言えばお手軽です。
しかし、自分の現場とは関係ない内容が多いので、結局使えるものが少なかったりします。
あまりにも自分の現場とかけ離れているものは、KYTをしていてもメンバーの反応も良くないです。
それだとあまりやる意味もないので、極力自分の職場につながる内容に絞りましょう。
②:厚生労働省のホームページのヒヤリハット事例を使用する
厚生労働省のホームページにはKYTの資料とヒヤリハット事例があります。
厚生労働省のKYT資料(49~66ページ):https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2e.pdf
これらもGoogle検索と同様に、自分の現場にあったものを探しましょう。
しかし、資料集は福祉系のイラストなので合うものが少ないかもしれません。
厚生労働省のヒヤリハット事例:https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/anrdh00.htm
ヒヤリハット事例はイラストがあるのでそれを使う事が出来ます。
しかし、あくまでも「ヒヤリハット事例」なので、イラスト自体がすでに危険な状態を表してしまっています。
どうしてもイラストが準備できない場合に使用しましょう。
③:イラストを準備せず、現場で行う
そもそもKYTの狙いは危険を想像する力を養う事なので、イラストにこだわる必要はありません。
イラストの準備すら要らなくなるのでこれが出来る場合は非常に楽です。
ですが、次のようなデメリットもあります。
- 現場を毎回選定しなくてはならない
- その作業が見れるかどうかがその時にならないと分からない
- 現場に行くので、現場によっては移動が大変
いざやろうとしたときに、その作業が見れなかったりするとKYT自体が行えなかったりします。
これでは何の意味もありませんので、その辺は注意しておきましょう。
いずれにせよ、資料を準備してKYTのやり方に沿って実施していけばOKです。
もう一度4R法を載せておきます。
4R法
- 1R:危険の洗い出しをする(どんな危険が潜んでいるか?)
- 2R:最も危険なポイントを決める(これが危険のポイントだ)
- 3R:その対策を考える(あなたならどうする?)
- 4R:目標設定する(私たちはこうする)
もちろんKYTはトレーニングの一つなので効果はありますが、これをやれば労働災害がなくなるわけではありません。
ですが、労災が原因となる「危険な状態」と「危険な行動」の2つのうち、「危険な行動」を減らす事が出来るので、とても大事です。
だから、KYTをしっかりと取り組んで、「危険な行動」を減らす力を付けましょう!
効果的なKYTにするには、現場の写真を撮って書式に貼り付けて資料を作りましょう。
最後に
「安全は一つをやれば完璧」という考え方では保てません。
色々な切り口から色々な対策を取り、総合的に労災の無い職場を作り上げていくのが良いと思います。
私がKYT以外にも色々と手を出した中でもっとも効果があったと感じたのが下の記事で解説しています。
KYTは頭を使いますが、こちらは「安全のために手を動かす」ものです。
大した手間もなく習慣化できるものなのでオススメです。
やはり具体的に行動することが一番大事です。
その他にも、安全の対策を体系的にした記事です。
それでは今日も一日ご安全に!