こんな疑問に答えます。
本記事の内容
- 賞金を出しても改善が進まない理由
- 改善を進めるために必要なもの
- 実践的な改善活動の進め方の解説
改善活動ただ強制的に進めるだけでなく、根本の「なぜ改善しないといけないの?」から説明し、改善活動を進めてきました。
改善活動の進みが悪い職場で悩んでいる人の悩みとして、「どうすれば良いのだろうか?賞金を出せばいいの?」という点があります。
かくいう私も、真剣に賞金を出すことを検討したことがあります。
賞金を出せばみんな賞金目当てに改善を進めてくれるんじゃないか?と思っていました。
実際には、当時の私には賞金を出すことが出来なかったので、賞金制度はやりませんでした。
しかし、今となってはやらなくて良かったと思っています。
やってはいけないとは言いませんが、賞金だけ出しても効果はほとんどないでしょう。
要するに、ポイントはそこではないのです。
そこで、今回は改善活動を進めるために必要な考え方と、具体的な進め方について解説していきます。
私自身が実際に現場の中で練り上げてきた進め方ですので、効果は実証済みです。
目次
間違った改善活動の進め方では改善は進まない
改善が進まない状態の現場の人に話を聞いてみると、
- 忙しくてなかなか時間が取れない
- 改善ネタが思いつかずに時間ばかりが過ぎている
こんな声が聞こえてきます。
そんなモヤモヤした状態から脱するために、「金を出せば皆その気になるんじゃないか?」、「これで一発逆転だ!」と考える人が結構います。
「改善が進む職場にする為には?」と、考えるとまず出てくるのがこの考えです。
あなたも思いついてしまったのではないですか?
はっきり言って、この考え方では改善活動は進みません!
進んだとしても、最初の短い期間だけです。気が付けば提案制度や賞金というのは、面倒くさくなって誰も提出しなくなります。
もし、提出があったとしても制度を作った偉い人に気を使って無理やり出している、というのが現実ではないですか?
だいたい、忙しい中頑張って100万円改善しても賞金が5000円とか1万円とかじゃメリットが無さすぎますよね。
100万円改善したら半分貰えるなら皆目の色変わるでしょうが、現実はそうはいきません。
要するに、賞金という「金(カネ)」で人を動かそうとしても、動くだけのメリットを与えられないのです。
しかも「金(カネ)」という部分に焦点を絞ってしまっています。
だから「じゃあ、金要らないからやらない」という返しに何も言い返せません。
このように、改善活動を進める為には「賞金」に頼っているのではダメなのです。
その原因についてもう少し深掘りしていきます。
改善活動が進まない理由
「賞金」以外にも出てくるのが「提案制度」です。
これらはざっくり言うと、「改善したらお金出したり表彰するから、頑張ってね!」というものです。
いきなりこの制度を立ち上げても、まずうまく行くことはありません。
うまくいかないはっきりとした弱点があります。
なぜうまくいかないと思いますか?
それは、賞金や提案制度は根本が「お願い」だからです。
「お願い」では、やりたい時はやるし、やりたくない時はやらないのです。
基本的に、人はやらなくていいことならやらなくなります。
だから、最初は「お金貰えるならやってみようかな!」と思っていても、日々忙しく仕事しているうちに「メンドクサイ」に変わり、気が付けば誰もやらなくなってしまいます。
そして、そもそもの話ですが改善って「お願い」してやってもらうものなのでしょうか?
改善活動は「お願い」ではない
改善活動をすることによって、うまくいけば年間数千万円~数億円の利益が出る可能性もじゅうぶんにあります。
製造現場にとって、コストダウンは終わりなきテーマです。
これは会社にとって絶対必要なことですよね?
つまり、改善は「お願いする」ようなものではないのです。
会社の為に絶対必要なことなので、はっきりと指・命令しなければならないのです。
オーダーを生産する時、お願いではなく指示・命令しますよね?
これが改善になると、なぜか急に「お願い」になっていませんか?
生産の場合、仮にどうしても達成しなければならない生産目標があれば、何が何でも達成しようとします。
そして、計画を立て実行していきます。
しかし、改善になるとなぜか突然、「コミュニケーションが・・・」とか、「発想が大事だ!」とか言って一歩引いてしまうのです。
「生産はしっかりと出来るけど、改善はしっかりと出来ない。」というのは、ここに違いがあるわけです。
生産も改善も会社にとって絶対必要なことです。
だから、はっきりと指示・命令して、現場に対して当たり前に改善を求める必要があります。
改善活動が進む現場にする方法
必要なのはしっかりした仕組みにすること
改善を当たり前に求め、指示・命令する。
「そんなことで進むなら誰も苦労しないよ!?」
このように思ったかもしれません。
たしかに、求める「だけ」では進みません。
そこから先も重要です。
再度、生産の場合の例で考えてみましょう。
生産の場合、当たり前に求め、指示・命令すると思います。
しかし、生産の場合は指示・命令だけでなく、 役割分担が決まっていますよね?
- 誰が原料を発注するのか?
- いつ生産するのか?
- 生産条件は?
こういったことが決まっているはずです。
しかし改善活動になると、何も決まっていない場合がほとんどです。
- 誰がやるの?
- いつやるの?
- 必要な物はどうやって準備するの?
- いつまでに改善するの?
こういった事をはっきりと決めず、出来るでしょ?という考えのところは多いです。
生産だったら、「余った原料と空いた時間で作ってよ。」なんて絶対言わないでしょう。
でも、改善になると、「お金はかけずに空いた時間で進めてね。」なんてことを言ってしまいがちです。
「当たり前に求める」ためには、必要なものを「当たり前に準備する」仕組みが必要なのです。
改善活動の進め方-5つの仕組み
では、その仕組みとは一体どんなものでしょうか?
具体的には次の仕組みが必要です。
改善に必要な仕組み
- 仕組み①:目的(改善が絶対必要あるということ)を理解してもらう仕組み
- 仕組み②: 改善を指示・命令する仕組み
- 仕組み③:改善を実施する仕組み
- 仕組み④:進捗を管理する仕組み
- 仕組み⑤:出した成果をしっかりと認める(ホメる)仕組み
大きく分けると以上の5つに分かれます。 それぞれ説明していきます。
仕組み①:目的を理解してもらう仕組み
これは、そもそもなぜ改善しないといけないか?ということを現場に理解してもらう為のものです。
ここを適当にしてしまうと、事あるごとに「なぜ改善活動なんてしないといけないの!?」というような発言が出ます。
方針に入れ込むことや、日々の朝礼で改善が当たり前に求められていることを伝える仕組みを作ることで、改善の目的を浸透させます。
後ほど、「なぜ改善活動をするのか?」という目的についても解説します。
仕組み②:改善を指示・命令する仕組み
これは改善が行われるように指示・命令する仕組みです。
これも方針で指示を出しつつ、改善が途中で止まらずにしっかりと進めていく為の指示・命令をします。
方針の中身を具体的に進めていく為の算段を立てることです。
仕組み③:改善を実施する仕組み
- 実際に改善をいつやるのか?
- 何をするのか?
- やり方が分からない場合はどうするのか?
などの実務的な部分を決めます。ここで疑問が残るようだと、改善は止まってしまいます。
仕組み④:進捗を管理する仕組み
改善がどの程度進んでいるのか?を確認して進んでいない場合は対策を入れる仕組みです。
これがないと、わからないことがあると改善が止まり、放置されてしまいます。
仕組み⑤:出した成果をしっかりと認める(ホメる)仕組み
行われた改善がどの程度の効果があり、どれだけの役に立ったのかを評価する仕組みです。
これが行われなくても、さしあたっては改善は進みますが、長期的に見ると改善は止まるか、現場のモチベーションが下がります。
以上の仕組みをしっかりと構築することで、「当たり前に求める」ことへの対応が出来上がります。
これらの仕組みがしっかりとしていれば、賞金を出しても問題ありません。
しかし、この仕組みが出来上がれば、わざわざ賞金を出さなくても改善は進みます。
逆に言うと、この5つが出来ていないと賞金を出しても出さなくても改善は止まってしまいます。
つまり、賞金はあまり関係ないのです。
具体的な改善活動の進め方の6ステップ
さて、改善が進む現場にする為に必要なことを説明してきましたが、いまいちピンと来ていないのではないでしょうか?
ですので、実際にやることを時系列に沿って次の6つに分けて説明していきます。
改善活動の進め方の6ステップ
- ステップ①:改善活動を行う目的を理解してもらう
- ステップ②:改善目標を方針に入れ込む
- ステップ③:だれがどのように改善するかを決める
- ステップ④:改善の進捗管理の仕組みを作る
- ステップ⑤:一度皆で確認する
- ステップ⑥:改善後に成果を確認する
ステップ①:改善活動を行う目的を理解してもらう
なぜ改善するかを説明します。
ここは、現場によって刺さる言葉というのが違うので、自分の現場にあった言葉を探してください。
一般的に通じやすい言葉を用いて例をあげます。
- 「改善をするのは、会社が求めていることです。モノを作るだけで良い時代はもう終わりました。」
- 「海外の安い人件費と戦うにはモノを作るだけなら勝てません。途上国並みに給料を下げなくてはなりません。」
- 「でも、あなたたちの強い現場力をもっと有効活用すれば必ず勝ち抜けます!」
- 「だから、あなたたちの実力貸してください。勝ち抜く為に当たり前に改善していきましょう!」
- 「一緒に頑張りましょう!」
こんなイメージです。
こういった内容を朝礼などで、ことあるごとに話をします。
ポイントとしては、「現場の強い力を貸してくれ!」と「一緒にやっていく」というスタンスがもっとも通じやすいです。
そして同時に、「やらない以外に道はない」ということも理解してもらいましょう。
ステップ②:改善目標を方針に入れ込む
そして、改善目標を職場の方針の中に入れ込んでいきます。
方針に入れ込む前に現場にどんなネタがあるかを考えてもらって、それを入れ込むのも良い手法です。
方針に入れ込むことで、会社として改善に取り組んでいくという大義名分が出来上がります。
さらに、自分たちでテーマアップすることで、他人事ではなくなります。
ステップ③:だれがどのように改善するかを決める
次に、方針に入れ込んだ改善をだれがいつ、どうやって行うのかを決めます。
基本的に「だれがやるか」はその実務担当者とその進捗を管理する班長にします。
職場の方針に、各個人の名前をいれましょう。
「いつやるか」は、私だったら現場作業の合間にやってもらいますが、必要なら残業してもかまいません。と伝えていました。
「時間がないから」が言い訳にならないようにしました。
「どうやってやるか」については、班長に全て任せました。
「とやかく言わないので、成果が上がる様にさえしてくれればOKです。」
「でも、放置するわけにはいかないので、定期的に進捗確認だけはします。」
と伝え、班長に責任を持ってもらってやりました。
個人的にはこれが一番効果があったように思います。やっぱり人から言われるよりも、自分で考えた方が本人たちも「その気」になりますね。
「信じて任せる」のが大事です。
ステップ④:改善の進捗管理の仕組みを作る
- 改善が止まっていないか?
- 必要な物がないか?
を確認する仕組みを作ります。
月一で報告会を開く、班長が毎月報告するなどして改善が止まらないようにします。
ここで、問題があればすぐに対応します。
生産がトラブった時にすぐ対応するのと同じです。
改善が進む現場になる為に、一番大事なところかもしれませんね。
ステップ⑤:一度皆で確認する
出来上がった仕組みを班長、実務担当者と上司にも見てもらい、これで問題ないかを確認しましょう。
ここでは、確認することが目的ではなく、全員が「これでいいね。」と納得してもらう為にやります。
これが終わったら、いよいよ改善活動スタートです。
ステップ⑥:改善活動後に成果を確認する
改善が完了したら、その効果を測定します。
年間○○万円の改善、作業時間が○○分の短縮のように数字を使って具体的な効果を出しましょう。
そして、数字だけでなく、その改善のおかげでどれだけ助かったかを説明し、感謝しましょう。
そして最後に、次も期待してるよ!と伝えましょう。
このような一連の仕組みを作りましょう。
以上のような仕組みを作ることで、改善活動を活発に進めることが出来るようになります。
ちなみに、わざわざ「仕組み」という言葉を使ったのには意味があります。
「仕組み」にすることで、人に依存しなくなり、組織で改善活動を行っていくようになります。
そうなると、これを最初に行なった人がいなくなったとしても改善活動が続くようになっているのです。
もちろん、何も考えなくても改善活動が続いていくわけではないですが、誰かが口を酸っぱくして言うだけの職場とは大違いでしょう。
だから、改善活動を仕組化していくことが大事なのです。
本当にこれで改善が進むのか?とまだ不安かもしれませんが、大丈夫です。間違いありません。
これは私が作ってきた改善の仕組みで、実際にこのやり方で改善が進む現場になっています。
他の現場でも試して効果があったので、大丈夫です。
さらに、これをやる為にはコストもいりませんし、失敗した時のデメリットも特にありません。
なんせ、やることをはっきりと決めるだけですからね。
効果のあるやり方ですし、もし万が一失敗しても(失敗なんてないですが)特に失うものもありません。
さらに言えば、これをすることで、仕事に対する目的意識というのも生まれますので、 自分の仕事にもプラスになります。
まさに何のデメリットもないので、ぜひ一度試してみてください!
最後に
改善は「お願い」するものではなく、「当たり前に求める」ものというのは、言われてみるとハッとしたのではないでしょうか?
もう一度、改善活動の進め方をまとめておきます。
改善に必要な仕組み
- 仕組み①:目的(改善が絶対必要あるということ)を理解してもらう仕組み
- 仕組み②: 改善を指示・命令する仕組み
- 仕組み③:改善を実施する仕組み
- 仕組み④:進捗を管理する仕組み
- 仕組み⑤:出した成果をしっかりと認める(ホメる)仕組み
改善活動の進め方の6ステップ
- ステップ①:改善活動を行う目的を理解してもらう
- ステップ②:改善目標を方針に入れ込む
- ステップ③:だれがどのように改善するかを決める
- ステップ④:改善の進捗管理の仕組みを作る
- ステップ⑤:一度皆で確認する
- ステップ⑥:改善後に成果を確認する
改善の賞金制度が気になっている人にとってはちょっとがっかりする内容だったかもしれません。
しかし、これが現実です。
捉え方によっては、改善の賞金を払わなくて済むので、楽になると言えるかもしれません。
金が絡むと結構面倒なことも起こりますしね。
改善活動を進めていくには、目的を見据えその目的を達成するために現場の人たちにしっかりと求め、現場の人の頑張りにしっかりと応えていけば良いのです。
こういってしまうと非常に簡単に聞こえてしまうかもしれませんが、大事なことです。
しっかりと改善を進める為の本質を捉えて、改善の進む現場にしていきましょう!
こちらの記事もオススメです。
改善の進まない理由を確認してみるのも良いと思います。
ネタが見つからない人はこちらが参考になります。
それでは、今日も一日ご安全に!