こんな疑問に答えます。
本記事の内容
- 改善報告書とは?
- 改善報告書の参考例文
- 改善報告書の7つの項目
- 書き方のポイント
改善報告書は自分の分も現場の人の分もたくさん書いてきました。
改善報告書の書き方がわからない人の良くある悩みとして、「何を書いたらいいのか?どう書いたらいいのか?がわからない」という点があると思います。
私自身、昔は書いてもダメ出しをされては修正を何度も何度も繰り返してきました。
何度もダメ出しをされるのが嫌で、中々上司に提出できず、催促されて提出することも多かったです。
そんな改善報告書を書くのが不得意だった私も、段々と慣れていき今ではさらっと書く事が出来るようになりました。
そんな私だから断言できますが、改善報告書は「そのうち慣れます」。大丈夫です。
慣れるまでは大変かもしれませんが、ポイントさえ押さえておけばより簡単に書く事が出来るようになります。
そこで、今回の記事では改善報告書の書き方のポイントや例文を解説します。
目次
改善報告書とは?
まずは改善報告書とはどんなものかを解説します。
改善報告書とは、その名の通り「どんな改善をしたのか?」を報告するものです。
ちなみに、同じような言葉で「改善提案書」がありますが、こちらは基本的には改善する前に承認をもらうために書くものです。
お金のかかる改善になると事前の承認が必要になるので、そういった場合に書きます。
「改善提案書」と「改善報告書」を同じものとして活用している所もありますが、厳密には違います。
会社ごとに決まった書式があったりしますが、基本的にどんな会社でも報告する内容はあまり変わらないので、ポイントさえおさえておけばOKです。
そして、改善報告書には次の4つの目的があります。
改善報告書の4つの目的
- 目的①:どんな改善をしたかを評価するため
- 目的②:他所へ展開するため
- 目的③:見直しによる改善の抜け防止
- 目的④:見直しによるさらなる改善の発見
これらの目的を考える事によって、報告書作成時に注意すべき事も見えて来ます。
目的①:どんな改善をしたかを評価するため
目的の1つ目は、あなたが行った改善がどんな内容でどれだけの効果があったかを評価するためです。
その改善がどれだけ意味のあるものかが伝わり、あなた自身の評価にもつながります。
目的②:他所へ展開する為
その改善自体が他所でも有効だと分かれば、水平展開されることによって、その改善の効果がさらに大きくなります。
このような事を行う為に改善報告書があるのです。
目的③:見直しによる改善の抜け防止
報告書を作成することで、自分のやったことを見直すことになります。
抜けがあった場合に気付くことができます。
さまざまな改善を行っていると、意外とこういう抜けがあるものです。
こういった抜けを抑えることで改善の質もさらに上がります。
目的④:見直しによるさらなる改善の発見
目的③と同様に、見直しをすることでさらなる改善点を発見できることもあります。
- 「この改善をさらに改善するには?」
- 「この改善を」別の箇所へも展開できないか?」
自分の行った改善に対してこういった質問をぶつけてみましょう。
何か見つかります。
改善報告書に記載する7つの項目
改善報告書には次の7つの項目を記載します。
この項目をそれぞれ書けば、それだけで改善報告書を完成させる事が出来ます。
改善報告書の8項目
- 項目①:テーマ名
- 項目②:背景・目的
- 項目③:改善内容
- 項目④:改善前・後の状態
- 項目⑤:改善効果
- 項目⑥:歯止め
- 項目⑦:今後の展開
これらを記入していきます。
例文として「作業分析による段取替作業時間の短縮」のテーマで解説していきます。
改善報告書(例文)
テーマ名
作業分析による段取替作業時間の短縮
背景・目的
- 改善対象となった作業は昨年度比150%程度まで急増している
- 他の作業と比べても時間を要し、合計30時間/月の残業で対応中
- 今後もこの作業は減る見込みはない
- 改善して無駄な動作を減らす事で、ロス時間を削減し作業負荷と残業を削減する
改善内容
作業分析を行うことで、無駄な動作を排除した。
- 1.作業者の作業中の様子を撮影し、作業内容を抽出
- 2.その作業の導線を紙に書き出し、無駄な動作が無いかを調査
- 3.ものを取りに行く動作を無くす為に棚を移動
- 4.繰り返し動作を無くす為、一度で持っていけるように台車を用意
改善前・後の状態
改善効果
1日10回この作業を実施しており、1回15分の作業が12分に短縮できた。
時間効果
・(15-12)分/回×10回/日=30分/日
・30分÷60分/時間×240日/年=120時間/年
金額効果
・加工費を350円/分として計算
・30分/日×350円/分=10,500円/日
・年間240日として、10,500円/日×240日/年=2,520千円/年
・台車購入代金:20千円
差引合計金額効果:2,500千円/年
歯止め
- 作業要領書を作成し、この作業を標準とする
- 作業台にこの作業要領書を貼り付け、年に1回見直しを実施
今後の展開
今回の作業だけでなく、他の作業にも同様の改善が可能かを確認し、展開を進める。
順に解説します。
項目①:テーマ名
テーマ名
作業分析による段取替作業時間の短縮
まずは、改善のテーマ名を決めます。
基本的には、次の方法でテーマ名を決めればOKです。
「○○」による「△△」の改善
「○○」には改善手法、「△△」には改善対象を入れれば、それだけで完成です。
例:作業分析を行って、無駄な動作を削減した場合
①「作業分析による無駄な動作の削減」
②「作業分析による作業時間の短縮」
こんな感じで簡単に決められます。
項目②:背景・目的
背景・目的
- 改善対象となった作業は昨年度比150%程度まで急増している
- 他の作業と比べても時間を要し、合計30時間/月の残業で対応中
- 今後もこの作業は減る見込みはない
- 改善して無駄な動作を減らす事で、ロス時間を削減し作業負荷と残業を削減する
続いては、改善の背景です。
何かの改善をするという事は、手間があったり、回数が多かったりと、それなりの理由があるものです。
特に、最近になって極端に増えたり、時間を使うようになった作業だと、改善テーマ選定の背景も非常に合理的なテーマ選定だと評価されます。
さらに、余計な費用が発生しているのであれば、それについても触れておくと良いでしょう。
項目③:改善内容
作業分析を行うことで、無駄な動作を排除した。
- 1.作業者の作業中の様子を撮影し、作業内容を抽出
- 2.その作業の導線を紙に書き出し、無駄な動作が無いかを調査
- 3.ものを取りに行く動作を無くす為に棚を移動
- 4.繰り返し動作を無くす為、一度で持っていけるように台車を用意
改善内容は、今回の改善のテーマで具体的にどんなことを行ったのかを書きます。
例文のように実施した事の流れを書くのもOKです。
項目④:改善前・後の状態
前後の状態が分かる様にします。
特に、図や写真などで前後の比較をするととても分かりやすいので、出来るだけ入れましょう。
文字で書く場合には、箇条書きで前後の比較をすると伝わりやすいです。
項目⑤:改善効果
改善効果
1日10回この作業を実施しており、1回15分の作業が12分に短縮できた。
時間効果
・(15-12)分/回×10回/日=30分/日
・30分÷60分/時間×240日/年=120時間/年
金額効果
・加工費を350円/分として計算
・30分/日×350円/分=10,500円/日
・年間240日として、10,500円/日×240日/年=2,520千円/年
・台車購入代金:20千円
差引合計金額効果:2,500千円/年
改善効果は、必ず「金額」を出すようにしましょう。
これは、改善の評価は最終的には金額が大きな要素となる為です。
企業活動ですので「最後は金」と覚えておきましょう。
具体的には、残業代や実質かかった金額の場合もありますし、加工費などの計算値を使用する場合もあります。
加工費:設備を1分間動かすのに必要な費用(○○円/分)
また、1人当たりの1分間の人件費がわかっている場合はそれを使用する場合もあります。
- ラインのロス時間が減る→加工費を使用
- 1人当たりの作業時間が減る→1分間の人件費を使用
その他、材料費や物品の費用等、色々と金額に換算できるものがありますので、自分の改善の内容から導き出しましょう。
金額以外にも、時間効果の大きいモノ、その他の効果の大きいものがあれば、金額と併せて書いておきましょう。
例文では、金額だけでなく、時間も記載しています。
項目⑥:歯止め
歯止め
- 作業要領書を作成し、この作業を標準とする
- 作業台にこの作業要領書を貼り付け、年に1回見直しを実施
例文では、「標準」にしたこと、作業台に貼っておく事で忘れないようにしたことを挙げています。
改善内容にもよりますが、ひと手間加わる系の改善だと、面倒くさくていつの間に無かったことにされている場合があります。
そうならない為にも歯止めをしっかりとしておきましょう。
項目⑦:今後の展開
今後の展開
今回の作業だけでなく、他の作業にも同様の改善が可能かを確認し、展開を進める。
今後の展開には2つのパターンがあります。
1つは水平展開です。
一つ改善をすると、その手法であったり、視点というのは、他にも展開できる場合が非常に多いです。
例えば、例文の作業分析は他のどんな作業でも展開できます。
最も時間を要している作業であったり、面倒だと感じる作業について実施するのも良いと思います。
もう一つは、垂直展開です。
さらに短縮できるところ、もっと改善できるところを見つけ出し、進めていく場合です。
もっと深掘りしたい場合に書きます。
ひとまず報告はしたけど、まだまだやり切れてない部分があれば、それを書けばOKです。
以上のように7つの項目を書いていくと、それだけで改善報告書に必要な内容は全て網羅できます。
改善報告書の書き方のポイント
より読みやすく、理解されやすくする為に次の5つのポイントがあります。
改善報告書だけでなく「報告書全般」に言えることですので、覚えておきましょう。
改善報告書の書き方のポイント
- ポイント①:具体的、客観的なものにする
- ポイント②:文体を統一する
- ポイント③:箇条書きに出来る所はする
- ポイント④:図や写真を使えるところは使う
- ポイント⑤:中身を知らない人にチェックしてもらう
順に解説します。
ポイント①:具体的、客観的なものにする
報告書は上司などの自分とは立場の違う人が見るものです。
ですので、自分たちにしかわからないような報告書では駄目です。
その現場を知らない人でも分かるように書かなければなりません。
そのためには、具体的、客観的にする必要があります。
- 一般人にも分かる言葉で説明する
- 解りやすいように図や写真を使用する
- 具体的な数字を使う
これらを心がけることによって非常に分かりやすくなります。
例えば、「これはすごい改善効果です」と書いてあったとします。
これを評価する立場に立って考えると、どう評価していいのかわかりません。
さらに、同じことを他の人も書いていた場合、どちらの方がすごいのか全く分かりません。
こういったことにならないように、具体的、客観的に書くことを心がけておきましょう。
ポイント②:文体を統一する
文章の基本ですが、「です、ます」で行くならそれで統一しましょう。
「だ、である」で行くのもOKです。
ちなみに、私は文書を作成する際は基本的に「だ、である」で統一しています。
文字数が多くなってしまうからです。
ポイント③:箇条書きに出来る所はする
箇条書きに出来る所は全て箇条書きにするつもりで書きましょう。
例文の内容を文章にすると、見ての通り分かりづらくなります。
例
改善内容
- 1.作業者の作業中の様子を撮影し、どんな作業をしているのかを抽出
- 2.その作業の導線を紙に書き出し、無駄な動作が無いかを調査
- 3.ものを取りに行く動作を無くす為に棚を移動
- 4.繰り返し動作を無くす為、一度で持っていけるように台車を用意
これを文章にすると、、、
作業者の当該作業中の様子を撮影し、どんな作業をしているのかを抽出した。その作業の導線を紙に書き出し、無駄な作業が無いかを調査した。ものを取りに行く動作を無くす為に棚を移動させた。繰り返し動作を無くす為、一度で持っていけるように台車を用意した。
これは、箇条書きの内容をそのまま繋げただけです。
しっかりと読み込まないと理解できなくなってしまいます。
一方、箇条書きの方はぱっと見で4つのステップがある事を理解できます。
このように、箇条書きにするだけで伝わりやすさは大きく変わりますので、箇条書きを使いましょう。
ポイント④:図や写真を使えるところは使う
これも同様に図や写真を使う事で伝わりやすくなります。
例文の導線を文字で書いたら大変なことになります。
しかし、このように図にしたことで、どれだけ変化したかが一目でわかります。
文章を書くよりも準備にすこし手間がかかりますが、伝わらなければ意味がないので、積極的に活用しましょう。
ポイント⑤:中身を知らない人にチェックしてもらう
自分が改善した内容は自分が一番詳しいので、どうしても「伝わるだろう」と思ってしまいます。
これが、中身を知らない人に伝えようとすると伝わらないものです。
だから、改善内容を知らない人に見てもらって、わかりにくい部分を指摘してもらいましょう。
これをするだけで印象はかなり変わります。
もちろん、人に見てもらう前に自分でもチェックしましょう。
声に出して読んでみる(頭の中で)、全体的な見栄えを見てみる、などをしてから他の人に見てもらいましょう。
ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、慣れないうちは必ずやっておきましょう。
最後に
以上のような形で改善報告書を作成すれば、伝わりやすい、要点を得た資料になります。
私自身改善をするのは好きですが、報告書を書くのは嫌いです。
そんな時間があるならもっと改善をした方が良いと思うタイプです。
ということで、面倒な気持ちは分かるのですが、報告もそれはそれで大切な仕事です。
サクッと仕上げてしまいましょう。
改善ネタに困っているのであれば、こちらの記事が参考になります。
改善の進みが悪いと感じたらこちらの記事が当てはまるかもしれません。
それでは、今日も一日ご安全に!