こんな疑問に答えます。
本記事の内容
- 5S活動が無駄になる原因
- 5S活動の目的
- 5S活動が無駄ではなくなる方法
当然5S活動についても深く取り組んできました。
5S活動が無駄だと感じている人のよくある悩みとして「実際、生産性落ちてるよね?」という点があると思います。
確かに、整理整頓のきれいさや、躾を守らせることにばかり躍起になって、うるさく言っている現場があります。
そういった職場では、上っ面の事ばかりに気を取られ、肝心の生産性がみるみる落ちていっています。
そして、現場のやる気もどんどん落ちています。
私も以前の上司から「5Sのための5S」と言えるような内容で叱られており、意味が分かりませんでした。
今でこそ5S活動をやる意味もしっかりと説明できるので問題ないですが、当時の自分が知っていれば…。と思うことも多いです。
5S活動自体に疑問を感じているならこの記事を参考にしてもらえればと思います。
目次
5S活動が無駄になってしまう原因
この記事を読んでいるのであれば、少なからず現在の5S活動に疑問を感じていると思います。
5S活動そのものが原因で生産性を落とすような事ばかりやっていると感じているのではないでしょうか?
おそらく、あなたは正しいでしょう。
そして、そういった生産性を落とすような活動は5S活動ではありません。
「5Sのための5S活動」とでも名付けましょう。
では、そもそも5S活動の目的とは何なのでしょうか?
5S活動の目的
5S活動の本来の目的はコレです。
5S活動の目的
5S活動は「改善活動」であり、経営的な成果をあげる事
企業の活動は、経営的に成果があがること(生産性の向上)を行なわなければ生き残れません。
だから、5S活動をやる以上は何らかの成果をあげなければなりません。
つまり、逆の言い方をすれば5S活動は「成果をあげる為の道具の1つ」である、とも言えます。
これを達成する為に、5つの「S」(整理、整頓、清掃、清潔、躾)という観点で生産性を上げていくわけです。
(5Sの解説記事はこちらです。)
5S活動が無駄になる原因:目的から外れているから
あなたが無駄だと感じたり疑問を感じているということは、この、「成果をあげる」、「生産性を上げる」という目的から外れていると感じているのだと思います。
スパナでボルトは締めれても、ねじは締めれません。
このように、道具は正しい使い方でなければ使えません。
そして、ボルトが無ければスパナを置いておく必要すらありません。
5S活動も同じで、成果をあげる為に使わないのであればやる意味がありません。
ここが最も重要なポイントですので、しっかりと覚えておいてください。
恐らく、今あなたは「やっぱりそうだよね、生産性上げないならやる価値無いよね。」と考えているのではないでしょうか?
上司や職場がどうもおかしいと感じているのではないでしょうか?
生産性を上げることが抜け落ちているなら、間違いなくあなたが正しいです。
無駄になっている5S活動の具体例
「成果をあげる」という目的から外れてしまうと、5S活動は途端に無駄な活動になってしまいます。
多くの場合、それは「5S活動のための5S活動」となっています。
あなたも次の例と似た経験があるのではないしょうか?
机の上が汚い事を指摘されたが、きれいにしたらわざわざ物を取りに行かなくてはならず、逆に生産性が落ちてしまった。
「使いにくくなるから、これは机の上に置いておきたい」と伝えても、「とにかくダメ!」の一点張り。
ダメな理由もわからず、生産性を落とすことになり、やる気も急降下…。
その他にもこんな話もよくあります。
ルールを作ったので、今後はこれに従ってやるようにとの指示が来た。
肝心のルールは「とりあえずマニュアルにしただけのレベル」で、この通りにやっていたら通常の倍は時間がかかる。
守っていたら仕事が終わらなくなるので、ルールを無視していたら「何でルール通りにやらないんだ!」と叱られた。
「この通りにやっていたら終わりませんよ!」と答えても「ルール通りやらないのはダメだろ!決められたルールも守れないのか!?」と言われた。
他には、目的から外れた活動に合わせて、次のような事も起こります。
月に1回お偉いさんが5S巡回にやってくるので、その前日に皆で一斉に片づけをしている。
余計なものが出てきたときは、巡回ルートになっていない場所に無理やり押し込んで巡回時に指摘されないようにしている。
これらのような、一体何のためにこの活動をしているのか!?と呆れてしまうような事例が起こっています。
これは「5S活動をすること自体が目的」になってしまっているからです。
整理整頓のための活動、躾のための活動とも言えます。
しかもこれを言う本人は、これを「5S活動」だと思っているわけですから、なぜ協力しないのかが理解できません。
目的が生産性を上げることではなく5S活動をする事なので、生産性が落ちるかどうかは関係ないのです。
もしくは、うすうす気づいてはいても、真剣にやるのが面倒くさいのでしょう。
5S活動はそれ自体が、1つ1つの改善の中で「なぜなのか?」、「どうすれば良いのか?」をしっかりと考えないと良い改善はできません。
にもかかわらず、根本の「なぜ5S活動をするのか?」がわかっていないのです。
「上司に言われたから」、「そうやって教育されてきたから」としか考えていない人がいます。
これでは5S活動をどんなに熱心にやっても無駄になってしまいます。
こうならない為にも、5S活動は必ず「成果をあげる」、「生産性を上げる」ことを目的とし、「その為に何をすべきか?」を考えて行動するのです。
もちろん、私は「キレイにするな」とも、「ルールを守るな」とも言っていません。
キレイな方が良いのにも理由がありますし、ルールを守ることも重要です。
「5S活動をなぜやるのかを考えて、それに合った行動をとりましょう」と言っているだけです。
むしろ、改善手法としての5S活動は非常に重要です。
だから、成果をあげる為の5S活動を行いましょう。
5S活動が無駄ではなくなる方法
無駄ではない、成果をあげる5S活動にする対策を解説していきます。
対策:5S活動の基本に立ち返る
対策はこれです。
やはり、5S活動の本来の姿に立ち返るのがベストです。
その方法は「5つのステージを知り、自分の職場がどのステージにいるのかを知り、道筋を立てていく事」です。
詳細はこちらの記事で書いてますが、5Sには次の5つのステージがあります。
5Sの5つのステージ
- ステージ①:見た目のステージ
- ステージ②:使いやすさのステージ
- ステージ③:仕組み改善のステージ
- ステージ④:継続的改善のステージ
- ステージ⑤:経営システムのステージ
それぞれのステージを一言で言い表すと次のようになります。
・ステージ①:見た目のステージ
→「見た目をきれいにする」ステージです。誰でも始まりはここです。
・ステージ②:使いやすさのステージ
→モノの使いやすさや、作業、ルールのやりやすさを考えるステージです。
・ステージ③:仕組み改善のステージ
→作業自体の仕組みを考えるステージです。
・ステージ④:継続的改善のステージ
→1つの改善を行うのではなく、「改善自体が継続的に進む」事を考えるステージです。
・ステージ⑤:経営システムのステージ
→徹底的な5Sによる改善を経営システムにまで昇華させたステージです。
この5つのステージのうち、ステージ③まで行けば、かける時間と労力に対するメリットが得られるようになります。
自分の職場が今どのステージにいて、ステージ③まで行くために何をするのか?をしっかりと認識しましょう。
そしてそれを実行すれば、経営的に成果のあがる活動になるわけです。
5Sの基礎の重要性
そして、このステージ③に行くには、まずは前段階である「見た目のステージ」と「使いやすさのステージ」をクリアしなければなりません。
これをすっ飛ばしてステージ③に進もうとすると、改善が進まなくなります。
もちろん、それでも単発的な改善は出来ますが、長い目で見ると必ず停滞します。
これには、次の2つの理由があります。
- 見た目すら改善できないレベルで他の改善が進むわけがない
- 見た目がすっきりしていないと、考えが深くならず良いアイデアが出てこない
特に、2つ目の「考えが深くならない」は重要です。
見た目をきれいにするだけでも、目に入ってくる余計な情報が減り頭が整理されることになります。
汚く雑多なものをみて考えるのと、キレイなものを見て考えるのでは、それを改善する思考の深さが段違いに変わります。
どこに何があるのかもわからない、どんな作業をしているのかすらわからないような場所で「理想の作業」なんて考えられないですよね。
だから、先に、要らないもを排除して見た目をすっきりとさせたうえで、作業改善をじっくり考えていく必要があるのです。
もちろん、人によっては汚くても考える事が出来る、と思う人もいるかもしれません。
確かに考える事が出来るのかもしれませんが、見た目がきれいで邪魔するものが無ければ、さらに深く考える事が出来ます。
見た目のステージは、見た目が目的なのではなく、先々の戦いのための準備なのです。
だから、ステージ①の「見た目」もしっかりとクリアしておくことが重要です。
同様の理由から、ステージ②の「使いやすさ」も重要です。
これらのステージをしっかりとクリアしたうえで次のステージに進みましょう。
しかし、この「見た目」と「使いやすさ」のステージにいつまでもいたのでは、成果はあがりません。
早くステージ③に上がりましょう。
5S活動はあくまでもツールの1つ、目的は改善する事
ここまで書くと、5S活動自体に意識が集中してしまいがちです。
集中する事は良いのですが、どこまで行っても「5S活動は改善の為のツール」でしかありません。
パソコンと同じで1つのツールです。
パソコンを導入したから生産性が上がるわけではないのです。
「パソコンで仕事を楽にこなすように改善したから」生産性が上がるのです。
あくまでも5S活動は改善の為の5S活動であって、5S活動は目的ではありません。
この事をしっかりと認識しましょう。
もちろん、現実的にはあなたが理解していたとしても、職場や上司が理解しておらず、理不尽な事を言われたりするかもしれません。
5S活動は現実的にはいつもスムーズに進むものではありません。
だから悩む人も多いです。
しかし、たとえ周囲が理解していなくとも、自分だけでもしっかりと理解して、考えて5S活動を行えば良いのです。
見た目だけを指摘されても、見た目だけでなく中身まで考えられた改善をすればいいのです。
ベストを尽くしましょう。
そして、一つ注意しておきたいのが、「自分も同じにならないこと」です。
周囲が理解していないと、周囲の人を心の中で小馬鹿にしてしまいがちです。
そうなると、指示されてもしっかりと考えなくなってしまいます。
「わかってないあいつが言うんだから適当にしておけばいい」
この考え方を持つようになると、あなたも5S活動を出来ていないと言わざるを得ません。
常に「どうすれば生産性が上がるのか?」、「成果が上がるのか?」を考え行動し続けることが重要なのです。
ここを勘違いしないように注意しましょう。
そして、こういう風に5S活動を行っていけば着実にあなたの実力は上がっていきます。
実力が付けばいずれ発言権を持てますので、もし今がイマイチでも成長の機会だと思って地道に努力を続けましょう。
最後に
以上のようにステージ③まで上がる事で、5S活動は経営的に成果のあがる活動に出来ます。
一見無駄とも思える「見た目」や「使いやすさ」のステージも、次のステージへ行く為の準備だと認識して早く進めてしまいましょう。
あなたがしっかりと目的を認識して5S活動を行えば、決して無駄なものにはなりません。
5S活動を無駄なものにしてしまうかどうかはあなた次第と思ってOKです。
ぜひ、どんどん活動を進めて改善の効果を出していきましょう!
具体的な改善事例をお探しの場合はこちらの記事をどうぞ。
それでは、今日も一日ご安全に!